「療育」ってどんなイメージですか?
医療の療と書きますが、医療的なことをするわけではありません。
1人ひとりの子どもの特性をしっかりと理解し、細かな配慮をし、個別に対応することが療育です。
人により療育の定義は違うかもしれませんが、私はこの「丁寧な保育」を療育として、療育教室で若い保育士にも指導してきました。
子どもだけではなく、保護者に対してもしっかりと向き合い、悩みや相談にも丁寧に耳を傾けました。
週に1~2回療育をしたからといって、子どもが劇的に変わることはありません。
毎日子どもと一緒にいる保護者こそ、子どもを理解し、正しい対応をしなければ、なかなか子どもは変わりません。
逆に言えば、親が変われば子どもは変わります。
療育とは丁寧な保育ですが、それは子どもに向けた保育活動だけではなく、保護者支援も大事な仕事の1つなのです。
日々の療育活動も保護者支援も、まずは子どもを理解しないと始まりません。
それでは、発達障がいの子どもの特性理解から始めましょう。
感覚の特性
感覚は5つではなく7つ
あなたは感覚がいくつあるか知っていますか?
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。これで5つですが、他にまだ2つあります。学校などで勉強しましたね?
固有覚(固有感覚)とは、筋肉・腱・関節などで感じる感覚で、手足の位置や運動の様子、物の重さなどの情報を脳に伝え、姿勢を保持したり体をスムーズに動かすために働きます。 力の入れ具合が難しく、例えば汁物を上手によそえなかったり、クレヨンを折ってしまったりするなど、不器用に見えることがあります。
前庭覚(前庭感覚)とは、耳の奥の前庭器官で感じる感覚で、平衡感覚ともいわれます。頭の傾きや動き、スピードや重力を脳に伝えます。目の動きに関連する働きもあります。 キャッチボールが苦手だったり、姿勢や目つきが悪かったりすることがあります。
感覚過敏、感覚鈍麻
感覚には人により、感じ方の強弱や程度に差があります。例えば同じ温度に設定していても、暑いと感じる人もいれば寒いと感じる人もいるように、全ての感覚は人それぞれ感じ方が違います。
感覚過敏は感じすぎるものです。例えば聴覚過敏で特定の音がものすごく苦手だったり、視覚過敏でライトの明かりがとてもまぶしく感じるなどです。 人によっては、雨が当たると痛がったり、落ち着きなく同じ動作を繰り返したり、疲れやすかったりします。
感覚鈍麻は過敏の逆です。疲れや痛みに気づきにくいなどがあり、例えば、鬼ごっこが楽しくて、疲れても気づかずに走り続けることがあります。
この感覚の過敏さ、鈍麻さが特性の凸凹です。
特性のでこぼこには個人差があり、発達障がいの子どもは凸凹の差が大きいことが多いです。
凸凹の大きさは強みです。凸を伸ばせば、子どもは大きく伸びます。
凸を伸ばすには、まずは特性を知ることから始めましょう。
感覚統合遊び
脳に入ってくる7つの感覚を整理整頓できるのは、感覚統合をしているからです。
7つの感覚のうちの、触覚・固有覚・前庭覚の3つの感覚は、いろいろな活動を行うための準備体制を整えるのに重要な役割を持っています。
これら3つの感覚を重視し、子どもが主体的に参加できるようプログラムされた感覚統合遊びが効果的だと言われています。
また、専門的にはおこなっていなくても、日々のプログラムに取り入れている児童発達支援事業や放課後デイサービスも多いです。
運動遊びでは、触覚・固有感覚・前庭感覚を養う動きを取り入れやすいです。
サーキット遊びはよく設定すると思いますが、例えばトンネルを「くぐる」、トランポリンで「ジャンプする」、素材の違うものの上を「歩く」など、何気なく設定しているような遊びでも、何に効果があるかを調べてみると、より質の高い保育ができます。
子どもになぜ?と感じる時の対処法
言っている言葉の意味が理解できていない。
大人の言葉が子どもに理解できていないことがあります。
例えば、すぐにテレビを見るのをやめてほしい時に「早くしなさい」と言っていませんか?
早くってどのくらい?
あなたの思う早いとは、具体的にはどのくらいの早さでしょうか?
5分以内にやめてほしいと思っても、子どもにまだ時間の経過の概念がない場合は「5分で」と言っても伝わりません。
見ている番組の「歌が終わったら」 「CMになったら」など、子どもにわかりやすい言葉で伝えると、案外スムーズに切り替えできることがあります。
よく使いがちな「ちゃんとしなさい」という言葉、言っている側は、「〇〇を△△すること」を意味しているのですが、子どもには〇〇も△△も伝わっていないことが多いです。
「シャツはズボンに入れようね」「お茶碗を持って食べようね」などと具体的に伝えると理解しやすいです。
他にやりたいことがある
遊びなどに集中している時に、ほかのことを促しても応じない場合は、子どもの納得がいくまでさせてあげると、結果的に短い時間で済むことがあります。
こだわりが強い子どもの場合、集中するとほかに意識が向かないことがあります。
大人でもそうだと思いますが、集中している時に声をかけられると邪魔をされたと感じますよね。
好きなことならなおさらです。怒ることもあるでしょう。
そんな時は待ってみます。納得がいくまでやれば気が済んで動けるようになるはずです。
あまりにも時間がかかるようなら、具体的に伝えます。
工作をしているならひと段落するまで。前もって区切りの形を伝えます。
時計がわかるなら「時計の長い針が12になるまでね」などと伝えます。
具体的に、前もって(見通しを持ちやすくする)伝えることが大事です。
自分のペースがある
子どもには子どものペースがあります。
ゆっくりすぎると待つ方はイライラすることもあるでしょうが、ゆっくりにも理由があります。
例えば、自分なりの順番があり、順番通りにいかないと最初からやり直す。少しでもズレると最初からやり直す。などです。
対応はこだわっている時と同じです。待てるなら待ちましょう。
絶対に無理強いしてはいけません。
嫌々させられても伸びません。もちろんやらないよりはやった方が効果はありますが、嫌々やるのと楽しんでやるのとでは、子どもの成長の伸びが全然違います。
子どもが1番伸びるのは、子ども自身が自主的に楽しんで行うときです。
もしも時間がないなどの理由で待てない状況なら、お子さんが抵抗しない程度で手伝います。例えばパズルなら、難しい真ん中あたりは手伝い、端っこはさせます。当然ながら最後の何ピースから必ず子どもで(笑)
きっちりしないと気が済まない完璧主義者。私たちにも似た特性があるでしょう?誰でも特性を持っています。
特性を理解し、適切な対応をすれば、イライラが減って楽しい保育ができますよ。
ほかにも理由はたくさん考えられますので、状況に応じて判断してみてください。決して熱くならず冷静に、子どもを観察すれば見えてきますよ。
まとめ
子どもの特性は様々で1人ひとり違い、対応も特性の数だけありますが、ポイントを意識するだけで子どもの理解が違ってきます。
伝えたいことをどの子どもにも伝えられれば、保育もやりやすく設定保育もスムーズに進められます。
- 無理強いしない。(子どもが自主的に参加できるよう促す)
- 具体的に伝える。
- 見通しを持たせる。
- 褒める
- 成功体験につなげる。
※さらに視覚に強い子どもには視覚支援が効果的です。
このポイントを押さえるだけでも、発達障がい児への伝わり方はかなり違ってきます。
もちろんポイントはほかにもあり、子ども1人ひとり違う対応が必要です。
療育を学ぶには療育施設での経験が1番の近道です。
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